ススメ!シンデレラロ→ド(クラリス編)第2話
- 冴島清美
- こらーーーーーーっ!!
- 少年
- やベッ……
- 冴島清美
- 待ちなさ……ぐううっ! 廊下を走ってはいけませーーん!!
- 横山千佳
- 逃げられちゃったねー。黒板消しトラップなんて、びっくりしたー!
- 八神マキノ
- 当たらなくてよかったけれど、まだ現役とはね。データを更新しておく必要がありそうだわ。
- 教師
- すみません、お怪我はありませんでしたか……?
- クラリス
- はい。少し驚きはしましたけれど、何ともありませんわ。それで……あの子は?
- 教師
- はい、あの子は……今回皆さんと歌わせていただくクラスとは、別のクラスの子なんですが、まあいつもあんな調子で。
- 教師
- 最初は小さな悪戯だったのがどんどんエスカレートしていって。言っても聞いてくれないので、親御さんも我々も手を焼いているんです……。
- 冴島清美
- なるほど、みなさんでも難しいと……であれば、ここは私たちがガツンと言わなければいけませんね!
- 八神マキノ
- 単に注意するだけでは無意味なのかもしれない。深く観察する必要があるわね。 その点は、任せてちょうだい。
- 横山千佳
- このままだと、悪い子になっちゃうかもしれないもん!チカたちがなんとかしなきゃ、だよねっ!
- クラリス
- では……そちらは皆さんにお任せしてもよろしいでしょうか。
- 八神マキノ
- わかったわ。……クラリスにも、何か考えがあるのね?
- クラリス
- ええ、私が引き受けるべき役割があるはずですから。皆さんを信じて、それを待つことにいたしますわ。
- 冴島清美
- では、私たちはあの子の動向を追いましょう!超☆風紀委員会、発足です!
廊下
- 教師の声
- そ、そんな……!チョークが全部見づらい色になってる……!?まさか、またあの子が……。
- 少年
- ヘヘッ、元のはここだよ〜♪赤とか黄色って見づらいんだよな〜。
- 横山千佳
- そこまでだよっ! 全部見づらい色にしちゃったら、授業が台無しになっちゃう! おとなしく、チョークを返しなさーい!
- 少年
- え、なんだよお前!さっきの……アイドル?何しに来たんだよ……!
- 横山千佳
- あたしの名前は、ラブリーチカ!悪いことする子は、成敗しちゃうんだからっ!
- 少年
- くそっ、逃げろ〜!
- 横山千佳
- 逃がさないよっ! 悪に染まりかけてるハート、ラブリーチカの魔法でキラキラにお掃除してあげる!
- 横山千佳
- おっとっと、廊下は走らないように……早歩きっ!待て待て〜っ!
教室
- 冴島清美
- まったく、黒板に落書きだなんて!それに堂々と名前まで……。神聖なる学び舎をなんだと思っているんでしょう! 黒板消しをお借りしますよ、すぐに綺麗にしなければ。
- 子どもたち
- 清美おねーちゃん、手伝うよー。
- 冴島清美
- ありがとうございます。 はあ……あの子にも、あなたたちみたいな いい子になってほしいんですが……。
- 女の子
- うーん……でも、すごく悪い子でもないんだよね。いたずらはするけど、いじわるはしないし……あ、そうだ。おねーちゃんたちが来ること聞いてから、ひどくなったかなあ。
- 冴島清美
- ……ふむ。貴重な情報、ありがとうございます。これはマキノさんに共有したほうがいいかもしれませんね。
校庭
- 八神マキノ
- なるほどね。清美の情報によれば、私たちの仕事がいたずらの動機になるのかしら。 さて、捕獲作戦のほうは……。
- 横山千佳
- 見つけたーーーーっ!校庭なら走っても怒られないねーーっ!マジカル・ダーーッシュ!!
- 少年
- うわ、はやッ!?
- 八神マキノ
- ……逃げられたわね。 けれど、他に生徒から得た情報とも合わせると、確かに……。備品類の破壊行為も、生徒との暴力沙汰もない。
- 八神マキノ
- ただ、「いたずら」レベルに留まるような行為だけをしている。前は協調性もあったという記録もあるし。原動力は衝動ではなく、彼の何らかの意思……?
- 八神マキノ
- ……ああ、そういうことね。クラリスも、なんとなく気づいていたのかしら。確かに……子どもには、ありがちな感情だわ。
音楽室
- 八神マキノ
- ……という感じで、こちらのデータは揃ったわ。あの子、「みんなの注意を引きたいだけ」なんじゃないかしら。
- クラリス
- やはり、そうでしたか……ありがとうございました。
- クラリス
- あとは私にお任せを。スタッフさん、少々よろしいでしょうか……。
- 少年
- あれ、まだ歌ってないのか……?
- クラリス
- ええ、まだ。どうぞお入りください。
- 少年
- ……ねーちゃんはなんにも言わないの、オレのこと。
- クラリス
- そうですわね……私は、貴方のお話を聞きたいのです。もしお話いただけるのであれば、聞かせてもらえませんか?
- 少年
- ……うん。ほんとは、オレも一緒に歌いたかったんだ。勉強だって、ちゃんとできるようになりたい。 でもオレのクラス選ばれなかったし、勉強もよくわかんねーし。
- 少年
- それでなんかさ、イヤになっちゃって……。仲間外れにされたみたいで、みんなにいじわるなことした。もう、みんなオレのことなんか嫌いだよな……どうしよう……。
- クラリス
- ですが、自分がやったことは悪いことであったと、反省はしているのですね。では……何か、言うべきことがありますか?
- 少年
- うん……ごめんなさい。
- クラリス
- ……はい、聞き届けました。主は貴方をお許しになるでしょう。先生やお友だちの皆さんにも、一緒にごめんなさいしましょうね。
- クラリス
- どうぞ、皆さん。お入りください。
- 少年
- みんな……アイドルのねーちゃんたちも……ごめんなさい。オレ、一緒に……歌いたくって!
- 子どもたち
- いいよ、そんなに気にしてないし。一緒に歌お!
- クラリス
- スタッフさんも先生も、ぜひ貴方も一緒にと。さあ、貴方の本当の音色を、お聴かせくださいね。
仲良く、楽し気な歌声が響き渡った……